日本の神々

日本の神々 (岩波新書)

日本の神々 (岩波新書)

 「日本書紀」や「古事記」が書かれる以前の、日本古代の神々の原像を探ろうとした本。そのためには、国家神道や仏教の影響のないものを探さないといけないため、取り上げられている話は、庶民の民話や沖縄の民話が多くなっている。
 日本の神々の源流は、西洋で見られるような意志をもち人格をそなえたようなものではない。本居宣長は、「可畏きもの(かしこきもの)」と読んだ。これは見事なもので、日本の神とは、私たちに畏怖の情を与えるものである。意志も人格もなく、空中を浮遊していて、人間に幸いをもたらすこともあれば、害を与えることもあるものだった。このあたりは、アニメの「もののけ姫」や「蟲師」を思いうかべるとわかりやすい。
 仏教の伝来後、死えは仏門に、神社はたんなる親祭の場とみなされるようになった。しかし、かつては神社も死と生の2つをあつかうものであったはずで、それが分裂したのには神道天皇制との関係がある。
 キリスト教以外にも、洪水神話は世界のあらゆるところで見つけることができる。それにより天地創造がはかられているわけだが、このときに必ず原罪が生み出されている。それはなぜか。それがなければ、人間社会の不条理を説明できないためだ。楽園からの失墜、それが社会の矛盾や葛藤、疎外についてのもっとも切実な解釈を提供するのだ。