すみれの花咲く頃

すみれの花咲く頃 (講談社BOX)

すみれの花咲く頃 (講談社BOX)

 ヤングマガジンコミックスでは収録されていなかった「なかない渚」と「すこしときどき」を加えて、講談社ボックスで復刊されている。その2作品を読みたいがために購入した。
 2作品とも、松本剛らしい短編である。不器用な男の子と、心に何かストレスをもつ女の子がいて、男の子は不器用なりに女の子の気持ちを察して、それを不器用なりにどうにかしようとするのだけど、なかなかうまくいかず、女の子は男の子のそんな気持ちがわかって、二人の距離は少しだけ近づく。
 深くマンガを知っている人ならば、松本剛が如何に優れた漫画家であるかわざわざ説明する必要は無いだろう。ストーリーもいいのだか、すばらしいのがその演出力だと思う。マンガでこんなことができたのか、と驚くような演出を、さらりと何気ないようにやってくる。ひたすらに、嘆息する。
 とにかく、マンガをもう少し描いてくれ。こうやって復刊されているのだから、需要はあるはずなんだろ。