すべてがFになる

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 森博嗣のデビュー作。で、第1回メフィスト賞受賞作。
 おもしろかった。事件の解決は萌絵がするものだとばかり考えていたから、犀川が解決したのが意外だった。
 学者であるから感じるアウトサイダーの悲しみや、それでも社会の中で生きる限りつきまとうしがらみやジレンマに悩まされる犀川の姿にたいして、真画田四季の姿はおそろしく爽快だ。彼女は自分自身の人生ですら、あっさりと脱出してしまう。
 本文から犀川の台詞が表紙に引用されていて、

「先生……、現実って何でしょう?」
 萌絵は小さな顔を少し傾けて言った。
「現実とは何か、と考える瞬間にだけ人間の思考に現れる幻想だ」犀川はすぐ答えた。「普段はそんなものは存在しない」

 とある。僕たちは、これが現実なんだとこの世界をながめることで、自分の不幸を現実になすりつけているのだろう。
 導入部分が上手い。